凪ぐ湖面のように
嫌な気分を追い払うように、アレでもないコレでもない、と言いながら何軒も店を歩き廻り、久々に心地良い汗をかいた。

流石に疲れたな、と二人分のプレゼントが入った紙袋を持ち、お茶でもして帰ろう、といつも立ち寄るカフェに足を向けた時、「岬」と呼ぶ懐かしい声が耳に届いた。

まさか……と速くなる脈を感じながらゆっくり振り返る。

「やっぱり岬だ。あの映像はやっぱり君だった」
「――舜……」

言葉が出てこない。
足早に彼が近付き目の前に立つ。

「どうして黙って居なくなったんだ!」

責められているわけではないが……やはり言葉が返せない。

「どれほど心配したか……探しまくったか」

きっとそれは嘘ではないだろう。
確か彼は院に上がったはずだ。あの大学院の理学研究科は相当忙しいと聞く。それなのに……。

「ごめんね……」

謝罪の言葉が自然に飛び出る。

「とにかく、話がしたい」
「――うん」

一人で入ろうと思っていたカフェに舜を誘い、席に着き、コーヒーを二つ頼む。
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