凪ぐ湖面のように
「俺に心配されるのは……迷惑、ということか」

舜の瞳が真っ直ぐ私を見る。

「――そうね。ある意味、迷惑かも」

心の奥にある弱さを悟られないように、私も負けじと見つめ返す。

「そうか」と舜が視線を落とす。だが、多分、私の負けだ。
舜は私の気持ちに気付いている。でも、気付かない振りをしてくれた。

「これ以上何を言っても、お前の気持ちは変わらなそうだな」

ニッと白い歯を見せる。
いつもの舜だ。

「なら、ストーカー扱いされないうちに退散するよ。今日は会えて良かった」
「私も……」

コーヒーを一気に飲み干すと、サッとレシートを持ち立ち上がる。

「岬、これを預けておく、いつかまた会えた時に返してくれたらいい。じゃあ、元気でな」

レシートの代わりに白い封筒が置かれた。

「最後だからいい格好させてくれ」

ピラピラとレシートを振り、軽くウインクする舜は相変わらずのキザ男だ。
笑いが込み上げる。

「了解! ご馳走様」

お互いに「さよなら」は言わない。
舜が言うように、多分、またどこかで会えると思うから……。
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