凪ぐ湖面のように
08)まさかの再会
両親は世界各国を飛び回るライターとカメラマンだ。今はロサンゼルスにいる。

『クリスマスを一緒に』と連絡を入れると、『航空券は予約手配済み、送ったから』と折り返し連絡が入る。

ビジネスクラスか勿体ないと言いながら、これも親孝行と思って素直に従った。

「もう、このままずっと一緒にいましょう」
「ママ、無茶言わないで。一月の末までね」
「断然、こちらの方が暖かいから、二月の末までにしたら」

それもそうかと滞在予定を伸ばした。

両親が言うように、パソコンさえあれば仕事はできる。それに、失恋の痛手を癒すには、やはりそれぐらいの時間は必要だと思ったのだ。

だが、その決断は間違いだったかもしれない。

「ねぇねぇ、今日ねっ、友人のパーティーなの、一緒に行かない?」
「行かない!」

こちらに来てからこんな会話ばかりだ。両親の魂胆は分かっている。誘われるのはパーティーと言う名の見合いだろう。

海のことを知っている両親は、今尚、私が引き篭もっていると思っているのだ。

そんなことないのに……でも、湖陽さんのことを持ち出すと話がややっこしくなるし……話したくても話せない。本当、悩ましい。
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