凪ぐ湖面のように
母の案内で店に着いたのは二十時前だった。カジュアルな店で、観光地らしく店内は様々な人種で溢れていた。

「どこへ行くの?」

賑やかな店内をどんどん奥に進んでいく母。
「ここよ」と立ち止まったのは最奥にある部屋の前だった。

その部屋の前には、黒い服を着たマッチョな男性が二人立っていた。
この人達ってボディーガード?

躊躇なく母がそこに入る。ボディーガードも止めない。どうやら顔パスらしい。
訳が分からないが後に続き中に入り、目を点にする。

「岬ちゃーん、お久し振りー」

嘘っ! 小野寺小町、湖陽さんの叔母さんではないか! どうしてここにってか、どうして母が? イヤイヤ、そもそも……全く訳が分からない!

混乱しながらも、湖陽さんはいないだろうなと部屋の中を見回し、姿がなかったことにホッとするが、今度は別のことで驚愕する。

「芸能人がいっぱい!」
「そりゃあ、そうだよ」
「パパ!」

見慣れた顔を見たお陰で、ようやく少し落ち着く。
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