凪ぐ湖面のように

世間って狭いのね、と日本から随分離れたロサンゼルスで言うのも変だが……つくづく人のご縁とは否もの味なものだ。

「ところで」と小町さんが私の肩を抱くき、耳元で囁く。

「湖陽に黙ってなぜこっちに来ちゃったの？」

どう言う意味だろう？

「湖陽ったら岬ちゃんと連絡が取れないって、物凄く落ち込んでね」

はて？　小町さんの前でまだ恋人ごっこを続けているのだろうか？
ということは、私もしなくちゃいけないってこと？　それはちょっと辛い。

「あのですね、美希さんって方が……」
「えっ、美希！　その子がどうしたの？」

小町さんの顔色が変わる。

「岬ちゃん、詳しく話して」

どうやら小町さんも美希さんのことを知っているようだ、だったら隠すことはない、と先日の一件を話す。

「ちょっと待って、美希がそんなことを貴女に言ったの？」

どうしたのだろう、物凄く怒っているように見える。

「あの馬鹿！　だったら自分が悪いんじゃない！　何が振られたよ。自業自得だわ」

ブツブツ呟きながら、「お灸を据えなくちゃ」と妖しい笑みを浮かべる。

「岬ちゃん、私に任せて、とっちめてやるから」