凪ぐ湖面のように
誰をとっちめるというのだろう?
小町さんの嬉々とした顔を見ながら首を捻る。

「岬、どうして言ってくれなかったの?」

今度は母だ。

「何のこと?」
「もう、いつまで白ばくれているの、湖陽さんとの交際をよ」

うわぁ、なぜそれを……じゃないか、小町さんからね……。
母のあの意味深な笑みは……だからか。ガクリと項垂れる。

「それ、もう無かったことにしておいて」

「あら、無くならないわよ」と答えたのは小町さんだ。

「小町さん、先程、ご説明しましたよね?」
「聞いたけど、根本が間違っているのよ」

本当、もう意味が分かんない。忘れるためにはるか海を渡り、ロサンゼルスくんだりまで来たというのに……もう勘弁して下さい。

「だから、私に任せて!」

小町さんと母の悪い笑みを横目で見ながら、だから私をそっとしておいてと心の中で叫ぶが、誰も彼もがソッとしておいてくれないようだ。

「小町さん、この子誰? 紹介して」

声を掛けてきたのは、愛男の主人公、桜智の相手役、新進男優である京極冬彦だった。

その横にいるのは、桜智の見合い相手だった社長でベテラン俳優、夏目雅也。いづれ劣らずのイケメン達だ。
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