凪ぐ湖面のように
店長は真面目な顔を取り戻すと、至極真面目に言った。

『お祓いは要りません。モーニングは午前八時半からです。只今の時刻は午前六時十分。そして、貴女がここに来たのは午前五時四十分。寝惚けるぐらいなら、ゆっくりお休み下さい』

この人はいったい何を言っているのだろう?

キョトンとする私に向かって店長は、人差し指を突き立て、それを私の目前から右上に向かって移動させ、時計を指差した。

『えっ、六時……二十八分? AM?』

デジタルの英数字に驚く私に、店長は、正解です、というように頷いた。

『あっ、でも、寝れませんね。それだけお腹が空いていたら』

またもや耳を疑った。
お腹を減らしているのをなぜ彼が知っているのだろう?

『もしや貴方は超能力者?』

今、振り返ると、どうしてああも馬鹿丸出しの発言をしまくったのだろうと反省しきりだ。きっとあの時の私は……頭のネジが二つ、三つ飛んでいたんだと思う。

『君って……』

だから、もう我慢できない、というように店長が涙を流し、ゲラゲラ笑うのを文句も言わずに黙って五分も見ていたんだと思う。

今なら、即、ビンタものだ!
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