凪ぐ湖面のように
「絶対、約束を守って下さいよ。絶対ですよ」

再度確認をして、詳しい説明を聞く。

「叔母は仕事中毒の独身で、僕たち兄妹を我が子のように可愛がってくれているんだけど、いかんせん、行き過ぎのところがあるんだ」

それはご両親が亡くなってから特に酷くなったと言う。

「この間、店に珍しく来たんだ。古くからの知人という人を連れて」

帰宅前、記念に一枚、と夕姫さんも一緒に四人で写真を撮ったらしい。
その写真を見た知人の娘さんが湖陽さんに一目惚れしたそうだ。

「で、一度でいいから会ってやってくれないか、と叔母に頼んできた」

叔母さんも知り合いだから無下に断れなかったみたいだ。

「でもそれが違ったんだよ」

知人の娘さんは店の常連、ということが夕姫さんの調べで分かり、見合いは仕組まれたものだと判明した。

「その子が仕組んで、母親と叔母が乗ったみたい。それを知って夕姫が滅茶苦茶怒って叔母に詰め寄ったら、あっさり白状したんだ。『だってご令嬢よ。逆玉よ。湖陽のためよ』ってね」
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