凪ぐ湖面のように
「ん? どうしたんだい? もう始まっているんだよ」
どうやらこの行為もごっこの一環らしい。ならばそう見えるようにしなければ、とちょっと身を寄せる。そこに湖陽さんを呼ぶ声が聞こえた。
「小町叔母さん、お待たせしました」
あっ、あぁぁぁ! 驚愕の一言に尽きた。
小野寺小町! 心の中で絶叫する。
何と、叔母さんと呼ばれた人は往年の大女優だった。
子役から人気を馳せた彼女は、『子役スターは大成しない』のジンクスを見事ブチ破った第一人者だった。
著書が映画化すると聞いた時、彼女に母親役をして欲しかったほど、私は彼女の大ファンだった。
生憎、彼女は独身で、母親役だけは無理、と断ったと伝え聞く。
その憧れのスターが目の前にいる。喋っている。
「岬さん、どうかしましたか?」
握った手をクイクイ引っ張られるが、抜けた魂はなかなか戻ってこない。
「この方が湖陽さんの彼女?」
小町さんが私を見つめる。
ダメだ! 煌めきオーラで目眩が……。
「おっと」とよろけた身体を湖陽さんが支えてくれた。
「――あっ、すみません。もう、何と申しましょうか……小町さん、サイン下さい!」
どうやらこの行為もごっこの一環らしい。ならばそう見えるようにしなければ、とちょっと身を寄せる。そこに湖陽さんを呼ぶ声が聞こえた。
「小町叔母さん、お待たせしました」
あっ、あぁぁぁ! 驚愕の一言に尽きた。
小野寺小町! 心の中で絶叫する。
何と、叔母さんと呼ばれた人は往年の大女優だった。
子役から人気を馳せた彼女は、『子役スターは大成しない』のジンクスを見事ブチ破った第一人者だった。
著書が映画化すると聞いた時、彼女に母親役をして欲しかったほど、私は彼女の大ファンだった。
生憎、彼女は独身で、母親役だけは無理、と断ったと伝え聞く。
その憧れのスターが目の前にいる。喋っている。
「岬さん、どうかしましたか?」
握った手をクイクイ引っ張られるが、抜けた魂はなかなか戻ってこない。
「この方が湖陽さんの彼女?」
小町さんが私を見つめる。
ダメだ! 煌めきオーラで目眩が……。
「おっと」とよろけた身体を湖陽さんが支えてくれた。
「――あっ、すみません。もう、何と申しましょうか……小町さん、サイン下さい!」