凪ぐ湖面のように
ランチを取るために自習室を出ると、二人はなぜか毎回付いてきた。

人間の性格はそう簡単に変わるものではないと、私は思っている。私の性格は昔も今も内向的だと思う。

孤独を愛し、自己の世界がリアルよりも大切で……だから孤独との戦いのような作家、という職業を続けてこれたのだろう。

そんなつまらない私の、何がそんなに二人は気に入ったの知らないが、まるで金魚の糞みたいだった。

そして、そんな二人を私もすんなりテリトリーに入れた。今更ながら自分でもビックリだ。

海と舜は幼馴染で高校も同じ、目指す大学も同じだと二人揃って嫌そうな顔をしながら笑っていた。

『うなばらうみ』と名乗る時、海が訊いた。『上から読んでも下から読んでも海原海、可笑しい?』と。

ううんと首を横に振り『カッコイイ』と言うと、『祖父が付けた名前なんだ。すっごく気に入ってるんだ』と照れ臭そうに笑った。その顔が天使のように綺麗で……。

たぶん、私はあの一瞬で彼に恋をしたのだと思う。そして、それが私の初恋だった。

人が聞いたら、随分遅い初恋だとビックリされるだろう。だが、リアルよりもバーチャルの世界に生きてきた私は、自分がリアルに恋ができたという方がビックリだった。

それ程、海の存在は大きかった。
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