凪ぐ湖面のように
「結局、大学二年の夏を前に海はフェードアウトするみたいに、私の前から消えてしまったんです」

あの時の思いが蘇り、喉が詰まる。

「それだけじゃなさそうだけど……」

湖陽さんの言う通りだった。

「消える前、海がよそよそしくなって、私、堪らず、告白したんです。だって、海も私のこと好きだって思っていたから」

その日、久し振りに二人で舜のサーフィンを見学した。

「あの日、海は覚悟を決めていたんだと思います。これが一緒に過ごす最後の時間だと」

でも、私はそんなこと思ってもいなかった。海とまた一緒に居られるのが、嬉しくて、嬉しくて……だから告白した。

「最後と覚悟を決めた海に、私は有りもしない未来を見せるように……告白したんです。彼の命がもうすぐ尽きるとも知らず。結果、散々な言われようで、私は振られました」

言葉を切り、自嘲気味に笑みコーヒーを一口飲む。

「あまりの辛さに私は舜に縋りました。舜も知らなかったんです。海がなぜそんな言葉を私に投げ付けたのか。舜は海が私を好きだと思っていたから……」

「舜っていう男も君のことが好きだったんだね?」
「――みたいです。私、そういうところ疎くて……」
「だろうね」

間髪入れず賛同され、ちょっと複雑な心境になる。
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