凪ぐ湖面のように
「――でも、電話に出たのは彼のお母さんでした。そして、告げられたんです。彼が亡くなったと……」
お母さんは病院のベッドで、彼がスマホを見ながら微笑んでいるのを何度も見掛けたと言った。
『あの子は幼い頃に余命宣告を受け、十八歳まで生きられないと言われていました。でも、二十歳まで生きてくれて……最後まで微笑んでいてくれました。たぶん、貴女のお陰だと思います。ありがとうございます』
「そうお礼を述べられました。最後の最後に彼を裏切り舜に縋った私に……」
「――それは、海君がそう仕向けたからだろ?」
「そうだったかもしれませんが、やっぱり、私は自分が許せませんでした」
乾いたばかりの瞳が、またジワッと潤んでいく。
「葬儀には行きました。本当に穏やかに眠っていました。その彼に、私、最初で最後のキスをしました。冷たい唇なのに……温かかったんです」
中指で自分の唇をソッとなぞる。
「あの時、海は確かに私の側にいました。だから……海に言ったんです。私も一緒に連れて行ってと」
湖陽さんが大きく目を見開いた。
「私はあの時点で死んだんです。海との思い出と共に過去を葬り、彼のお墓に一緒に入ったんです」
お母さんは病院のベッドで、彼がスマホを見ながら微笑んでいるのを何度も見掛けたと言った。
『あの子は幼い頃に余命宣告を受け、十八歳まで生きられないと言われていました。でも、二十歳まで生きてくれて……最後まで微笑んでいてくれました。たぶん、貴女のお陰だと思います。ありがとうございます』
「そうお礼を述べられました。最後の最後に彼を裏切り舜に縋った私に……」
「――それは、海君がそう仕向けたからだろ?」
「そうだったかもしれませんが、やっぱり、私は自分が許せませんでした」
乾いたばかりの瞳が、またジワッと潤んでいく。
「葬儀には行きました。本当に穏やかに眠っていました。その彼に、私、最初で最後のキスをしました。冷たい唇なのに……温かかったんです」
中指で自分の唇をソッとなぞる。
「あの時、海は確かに私の側にいました。だから……海に言ったんです。私も一緒に連れて行ってと」
湖陽さんが大きく目を見開いた。
「私はあの時点で死んだんです。海との思い出と共に過去を葬り、彼のお墓に一緒に入ったんです」