凪ぐ湖面のように
「そうだ、いいことを考えた!」

湖陽さんがパチンと手を打つ。
なぜかとっても嫌な予感がする。

「僕たちはカモフラージュの恋人同士だよね? だったら、世間で言う恋人同士がするような体験をしてみない?」

んーと空を見上げ、少し考える。
恋人同士って何をするんだ?
だから訊いてみる。

「例えば?」
「そうだね、遊園地デートとか?」

なぜか湖陽さんも疑問符を付け答える。

「えっと、ちょっといいですか?」

片手を小さく上げ、質問する。

「湖陽さんてお付き合いの経験、おありなのですか?」

よくよく考えたら、イケメンにとんでもない失礼な質問だった。

「うーん、大学生ぐらいまでは、そこそこ人並みにってとこかな」

それはそうだろう。これ程の男を世の女たちが放っておくはずがない。

「では、経験者は語る。ですね?」
「それがそうでもない、というか……」

何となく歯切れが悪い。
どうしたというのだろう……。
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