凪ぐ湖面のように
04)身から出た錆
「岬さん、改めて訊ねますが僕の第一印象はどうでしたか?」

イケメンだと思いましたよ、と素直に答える。

「ありがとうございます。自慢ではないのですがモテるんですよ、僕」

いやいや、改めて言われなくても承知しているし、第一それ自慢だろう、と思わずツッコミそうになるが、私も大人だ、こんなことで目くじらは立てない。

「で、早い話、何が言いたいのでしょう?」

しかし、自慢話など、ちゃっちゃと終わらせたい。

「お恥ずかしながらそんな訳で自惚れていたんです」

そんな訳とは、モテることを鼻にかけていた、ということらしい。

「性に目覚めてからは来る者拒まず状態で……」

それは驚きの事実だ。まぁ、でも、この容姿だ、入れ食い状態だったのだろう。

「今とは真逆の生活を送っていらしたんですね」

よく今まで刺されなかったものだ。ご無事で何より、と僅かに心配しながらも嫌味でチクリと刺す。

当の本人は、「ええ、そうなんです」と頭を掻きながら、申し訳なさそうに顔を顰めた。

私にそんな顔をされても……と思いながらも、脳内メモリーに『湖陽さんは節操無しだった』と書き留めておく。
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