凪ぐ湖面のように
信じられなくても、私の中でそう決定しているのだ、放っておいて欲しい。

「とことん、失礼な反応ですね!」

ムッと顔を顰めると、湖陽さんの顔がスッと真面目になる。

「そんなおままごとのような恋に一生縛られて生きるつもりですか?」

本当、意地悪なイケメンだ。無性に腹が立つ。

「おままごと結構! 貴方が振られたお相手を大切にしていたように、私も海に大切にされていたんです。だから操を守って生き続けるってことの何が悪いんですか!」

フッと湖陽さんが鼻で笑う。

「それって、ヤキモチですか?」

はぁぁ! どこをどうとったらヤキモチという解釈になるのだ?

「すみません。頭が痛くなってきました。今日はこれでお暇します」

自己中のイケメンに何を言っても無駄だ。

「おや、それは残念だ。せっかくこの後、お約束の“オータム新メニュー”をいの一番にご馳走しようと思っていたのに」

そうだった。あの『お見合いぶち壊し大作戦』に乗った時、出した条件が『新メニューを一番に食べさせて』だった。

湖陽さんは、「マロンパイとキノコ尽くしのピラフ。それにパンプキンスープと……」と生唾ゴックンもののメニューを並べ立てる。
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