凪ぐ湖面のように
ダークブルーの空には、気の早い星が瞬いている。

空に合わせ湖の色は、目も覚めるようなオレンジ色だ。
少し風が吹いているのか、波がオレンジの年輪を描く。

残しておけるなら、この瞬間を切り取ってしまいたい。
それほど美しい眺望だった。

でも、それができないから、私はまた明日も、今日とは微妙に違う湖を眺めるのだ。

この地に越してきて、ここでこの風景と出会い、そんな風に思えたから、私は明日を迎え、こうやって生きてこれた。

幕が閉じるように、ダークブルーの空がブラックに変わり、湖と空の境が見えなくなった。

真っ暗な世界で、今度は星たちが自分の独壇場とばかりに輝き出す。
月は細い三日月で今は小さい。

おままごとの恋……湖陽さんの言葉がリフレインする。

「じゃあ、そうじゃない恋って、どんなのを言うの……？」
「それを僕と体験してみない？」

ハッと声の方に視線を向ける。
いつの間に？　それより独り言を聞かれた？

恥ずかしさで真っ赤になっていると、湖陽さんがテーブルにトレーを置いた。その上には、さっき言っていた秋の新メニューがズラリと並んでいた。
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