凪ぐ湖面のように
しかし、そんな嬉々とした思いは時間と共に消え失せる。なだらかな道と言っても、運動不足の私は【滝まで1.5KM】の看板のとこで既に息が上がっていた。

「岬、ほら」と湖陽さんが私の手を取る。
二度目の恋人繋ぎ……でも、今日はお芝居じゃない。

「こういう時、恋人同士は手を繋ぐものだろ」

サラリと言われ、何のリアクションも取れず、頬を火照らす。
前回も思ったが、昔取った杵柄? 何の躊躇も無く繋いでくる。

「いつもこんな風に手を繋ぐんすか?」

だから、照れ臭さを嫌味で返す。本当、私ってイヤな女だ。

「この前、岬と繋いだのを除けば、手を繋ぐのは高校のフォークダンス以来じゃないかな?」

フォークダンス? それはまたノスタルジーを感じるシチュエーションだこと、と思っていると、湖陽さんが笑う。

「学校の伝統行事っていうのかな、後夜祭でね。僕が卒業した高校はアメリカに母体があるんだ」

へー、そんなお洒落な高校に通っていたんだ。イケメンはどこまでいってもイケメンだと思っていると、「キャンプファイヤーってさぁ」といきなり何のことだ、と思うような話をし出す。

「火を囲んで『オクラホマミキサー』みたいなフォークダンスを踊るっていうイメージがない? アレってアメリカが発祥なんだよ」

プチトリビア? そうなんだ、とオクラホマミキサーの曲を思い出しながら、どんな風に踊るんだったかなと宙を見て、フト、本当に高校以来、繋いだことがないのだろうかと、改めて繋がれた手を見る。
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