凪ぐ湖面のように
「気持ち……悪くないんですか? 私と手を繋いで……」
「バカだな、気持ち悪いって思ったら自分から繋がないよ」

さもあらん、本当、馬鹿なことを訊いたものだ。

「あのさぁ、これでも結構あからさまに君を口説いているんだけど」

えっ、と横を見る。
前を向いたままの湖陽さんの耳が薄っすら桜色に染まっている。

照れている?

「――岬が好きだ」

呟きのような言葉に、空耳だろうかと思っていると、湖陽さんが立ち止まった。

サワサワと流れる水の音と少し冷たくなった風。そこに緑の香りが混じっている。そんんな空間が二人を取り巻く。

「口に出してちゃんと言ってなかったろ? それを思い出したんだ」

それって……真面目に私を好きだと言っているのだろうか?
胸に何かが流れ込み、息苦しさを覚える。

「いつの間にか本当に好きになっていた。この場で岬の気持ちは聞かない。まだ僕に向いていないって分かっているからね」

湖陽さんがお茶目にウインクする。

「だから、僕の気持ちだけ知っていて。というより、自己満かな、もう後悔したくないんだ」

それは美希さんのことだろう。
あっ、また胸が痛い。何だか吐きそうだ。
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