凪ぐ湖面のように
「どうやら、他所様から見たら、僕達は似合いのカップルのようだね。良かったね、岬」

湖陽さんがニコニコ顔で言う。
全く私の怒りは伝わっていないみたいだ。

だが、彼女たちの登場で、すっかり怒るタイミングを逃してしまい、湖陽さんに手を引かれるまま森ガールの後に続く。

「うゎぁー!」

人間とは、本当に単純な生き物だ。滝を見た途端、怒りが吹き飛んでしまった。
しかし、真に感動するとまともな言葉が出ないと言うは本当だ。

例えば入浴時に、『ふわぁー!』と意味不明の言葉が突いて出たり、可愛いものを目の前にした時『いやん何これ!』と何が嫌なのかさっぱり分からないが、取り敢えず言ってみたり……。

今、目にしている絶景の光景もそうだ。

「何これ!」

それは私だけでは無いようだ。先程の森ガール三人組も意味不明の奇声を上げている。

「比較的小さな滝だけど、水量と落差があるから見応えはあるだろう?」

確かに! 豪快で美しい眺めだ。

「マイナスイオンが一杯ですね。こういう現象をレナード効果って言うんですよね?」

へー、と湖陽さんが感心する。
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