凪ぐ湖面のように
頷くとニッコリ微笑み「了解!」とOKしてくれた。

「カップルの映像が欲しいから声だけの出演は無理だけど……後頭部とか引き気味の横顔とか、そんな感じで撮らせて頂くわ。それならいいでしょう?」

それなら、と了承して、「岬です」と苗字を伏せ名乗る。
友枝女史も無粋な人ではない。「じゃあ岬さん、よろしく」と軽くウインクした。

ここにきて改めて気付く。
友枝女史は凄くカッコイイ! 働く女性の代表みたいな人だ。

社会人になってからも、ずっと引きこもっていたし、こういう人とこんな風に触れ合うのは初めてだった。

胸がドキドキする。未知との遭遇? そんな感じだ。

だから思わず、「握手して下さい」と言ってしまい、はぁ? という顔をされた。

「顔が真っ赤。貴女って……岬ちゃんって……」

えっ、と思った時には「超、可愛い!」と抱き着かれていた。

「ウワッ、沙希、何やってんだ!」

沙希? 水谷さんの慌てた声が呼ぶ。
どうやら友枝女史の名前らしい。

岬に沙希、よく似た名前だなぁと感慨深く思っていると、ベリッと……本当にそんな感じで引き剥がされた。
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