亡国の王女と覇王の寵愛
「お前を殺すつもりはない。諦めろ」
「……私をどうするつもりなのですか」
滅ぼした国の王族など、残してしまえばいつか面倒なことになる。それがわからないような人ではないだろう。
ふとレスティアは、ここを何度も訪ねて来てくれたイラティのことを思い出した。
彼女もまた祖国が滅ぼされた後も、こうして敵国の王城に囚われている。
なぜジグリットはわざわざ滅ぼした王国の王女を王城に連れ帰り、こうして生かしておくのだろう。
「それはいずれわかる。もう一度聞く。これをどこで手に入れた?」
「……」
低く問い糾す声。
命令することに慣れきった、冷たい言葉だった。
もしイラティから受け取ったと答えれば、彼女もまたこのような部屋に閉じ込められてしまうかもしれない。
「私のものです。隠し持っていたのです」
「隠し持っていた、か」
それを聞き、ジグリットは至近距離まで近寄ってきた。
気丈に振舞っていたが、レスティアは大切に育てられた深窓の姫君だ。ジグリットが傍に来ただけで、びくりと身体を震わせてしまう。
怯えを悟られないように、手足に力を入れた。
「な、何を……」
伸ばしてきた彼の手を振り払う。けれどそんな弱々しい抵抗など、この男には通用しなかった。
「今まで死のうとした者はいたが、俺に刃を向けた者はひとりもいなかった。どうやらただのか弱い王女ではないらしい」
ジグリットはレスティアに手を伸ばす。
まるで荷物のように抱え上げられ、寝台の上に運ばれると、体勢を整える暇もなく押し倒された。両手を頭の真上で固定されて、動きを封じられる。
「いやあっ」
何をされるのか、はっきりわかったのではなかった。
ただ近づいてくる彼が恐ろしくて、必死に逃れようと暴れた。
「何も知らずに、知ろうもせずに。悲劇の王女を気取って死ぬほうが傲慢だ」
この言葉の意味を、このときは深く考える余裕などなかった。
「離して! 触らないで!」
「……私をどうするつもりなのですか」
滅ぼした国の王族など、残してしまえばいつか面倒なことになる。それがわからないような人ではないだろう。
ふとレスティアは、ここを何度も訪ねて来てくれたイラティのことを思い出した。
彼女もまた祖国が滅ぼされた後も、こうして敵国の王城に囚われている。
なぜジグリットはわざわざ滅ぼした王国の王女を王城に連れ帰り、こうして生かしておくのだろう。
「それはいずれわかる。もう一度聞く。これをどこで手に入れた?」
「……」
低く問い糾す声。
命令することに慣れきった、冷たい言葉だった。
もしイラティから受け取ったと答えれば、彼女もまたこのような部屋に閉じ込められてしまうかもしれない。
「私のものです。隠し持っていたのです」
「隠し持っていた、か」
それを聞き、ジグリットは至近距離まで近寄ってきた。
気丈に振舞っていたが、レスティアは大切に育てられた深窓の姫君だ。ジグリットが傍に来ただけで、びくりと身体を震わせてしまう。
怯えを悟られないように、手足に力を入れた。
「な、何を……」
伸ばしてきた彼の手を振り払う。けれどそんな弱々しい抵抗など、この男には通用しなかった。
「今まで死のうとした者はいたが、俺に刃を向けた者はひとりもいなかった。どうやらただのか弱い王女ではないらしい」
ジグリットはレスティアに手を伸ばす。
まるで荷物のように抱え上げられ、寝台の上に運ばれると、体勢を整える暇もなく押し倒された。両手を頭の真上で固定されて、動きを封じられる。
「いやあっ」
何をされるのか、はっきりわかったのではなかった。
ただ近づいてくる彼が恐ろしくて、必死に逃れようと暴れた。
「何も知らずに、知ろうもせずに。悲劇の王女を気取って死ぬほうが傲慢だ」
この言葉の意味を、このときは深く考える余裕などなかった。
「離して! 触らないで!」