亡国の王女と覇王の寵愛
美しい銀の装飾が施されている窓から見える庭園には、色取り取りの花が咲き乱れ、着飾った貴族達が談笑している。
レスティアは落ち着かない様子で何度も窓の外を見つめていた。そんな王女を侍女達は優しく見守っている。
今日は、式典に合わせてレスティアの婚約が発表されることになっていた。王女が落ち着かないのはそのせいだと、みんな知っているからだ。
候補者は以前から何人も上がっていたが、いずれ女王となるレスティアの補佐をすることができる人物を選ばなくてはならないと、国王は慎重だった。それをとうとう、今日の式典で発表すると前もって言い渡していたのだ。
「姫様はどんな男性がお好みですか?」
侍女の中では最年長に見える、おっとりとした女性が声を掛ける。
穏やかで優しい彼女は王女の一番のお気に入りで、いつもそばに連れていた。そんな彼女の質問に、レスティアは白皙の頬をほんのりと赤く染めて俯く。
「わからないの。ただ、ディア兄様みたいに優しい人ならいいなって思うわ」
レスティアがディア兄様と呼んでいるのは、現国王の甥であり、レスティアより五歳年上の従兄のことだった。
彼の母は国王の異母妹で、今は降嫁して公爵夫人になっている。だからディアロスに王位継承権はない。
ただ七百年続いたグスリール王家の血筋を保つことを考えると、彼が一番レスティアの婚約者に相応しいのではないかと言われていた。
そして彼はレスティアとよく似た美貌の持ち主であり、ディアロスの名が出るだけで侍女達の間にも華やいだ空気が広がる。
「ディアロス様なら、レスティア様と並んでも見劣りしませんね」
「とてもお似合いです」
口々に賞賛の言葉を述べる侍女達。
自分で名前を出したとはいえ、そう言われると恥ずかしくなって、レスティアは視線を反らした。
優しくて大好きな従兄だったが、結婚となるとまだ実感が沸かない。
大切にされていたレスティアは身内以外の男性と接したことは一度もなく、普通の同じ年頃の女性に比べると少し幼かった。夫婦となれば兄のように甘えているだけではいけないらしいが、まだよくわからない世界だった。
浮き足だった様子の侍女達をそっとたしなめ、最年長の侍女が、少し声を落として不安そうに呟く。
「それにしても、何だかこの王城に相応しくない人間も紛れ込んでいる様子ですが。どういうことなのでしょう」
レスティアは落ち着かない様子で何度も窓の外を見つめていた。そんな王女を侍女達は優しく見守っている。
今日は、式典に合わせてレスティアの婚約が発表されることになっていた。王女が落ち着かないのはそのせいだと、みんな知っているからだ。
候補者は以前から何人も上がっていたが、いずれ女王となるレスティアの補佐をすることができる人物を選ばなくてはならないと、国王は慎重だった。それをとうとう、今日の式典で発表すると前もって言い渡していたのだ。
「姫様はどんな男性がお好みですか?」
侍女の中では最年長に見える、おっとりとした女性が声を掛ける。
穏やかで優しい彼女は王女の一番のお気に入りで、いつもそばに連れていた。そんな彼女の質問に、レスティアは白皙の頬をほんのりと赤く染めて俯く。
「わからないの。ただ、ディア兄様みたいに優しい人ならいいなって思うわ」
レスティアがディア兄様と呼んでいるのは、現国王の甥であり、レスティアより五歳年上の従兄のことだった。
彼の母は国王の異母妹で、今は降嫁して公爵夫人になっている。だからディアロスに王位継承権はない。
ただ七百年続いたグスリール王家の血筋を保つことを考えると、彼が一番レスティアの婚約者に相応しいのではないかと言われていた。
そして彼はレスティアとよく似た美貌の持ち主であり、ディアロスの名が出るだけで侍女達の間にも華やいだ空気が広がる。
「ディアロス様なら、レスティア様と並んでも見劣りしませんね」
「とてもお似合いです」
口々に賞賛の言葉を述べる侍女達。
自分で名前を出したとはいえ、そう言われると恥ずかしくなって、レスティアは視線を反らした。
優しくて大好きな従兄だったが、結婚となるとまだ実感が沸かない。
大切にされていたレスティアは身内以外の男性と接したことは一度もなく、普通の同じ年頃の女性に比べると少し幼かった。夫婦となれば兄のように甘えているだけではいけないらしいが、まだよくわからない世界だった。
浮き足だった様子の侍女達をそっとたしなめ、最年長の侍女が、少し声を落として不安そうに呟く。
「それにしても、何だかこの王城に相応しくない人間も紛れ込んでいる様子ですが。どういうことなのでしょう」