亡国の王女と覇王の寵愛
最年長の侍女は彼らを見て眉をしかめ、レスティアを庇うようにして立つと、無礼にも王女の道をふさぎ、その足を止めた無礼な者達に抗議をしようとした。
だが男達は剣を抜き、それをこちらに向けた。
「……っ」
白刃の煌き。
その恐ろしさに蒼白になったまま動けないレスティアを一瞥すると、男は泣き叫ぶ侍女達に低い嗄れた声で告げた。
「王女を置いていけ。そうすればお前達は見逃してやる」
レスティアがその言葉の意味を理解するよりも早く、侍女達は悲鳴を上げながら我先にと争って廊下を駆け抜けていく。
誰ひとりとして、今まで仕えていた王女を守ろうとする者はいなかった。
呆然と立ち尽くすレスティアを、男は嘲笑う。
「たいした王女様だ。身を挺して守らなければと思うような忠義者は、ひとりもいないらしい」
(な、何が起こっているの……?)
そんな屈辱的な言葉も、王女の耳には届かなかった。
事態を把握することができないまま、足が震えて立っていられなくなる。倒れるようにその場に座り込んだ王女を、壮年の男に付き従っていた若者達が左右から拘束して、引き摺るようにして無理矢理立たせた。
「はっ、離して……」
肌に触れる他人の温もりに、背筋がぞわりとする。
振り解こうとして弱々しく抵抗するが、儚い王女はあまりにも無力だった。男達は、薄紅色のドレスから伸びるレスティアの細い腕をきつく掴んで連れ去っていく。
(ひどい。どうしてこんな目に……)
今まで、こんな乱暴な扱いをされたことなど一度もない。
忌まわしい手から何とか逃れようとしているうちに、靴が片方脱げてしまった。
綺麗に整えられていた金色の美しい髪が乱れ、飾っていた生花から花弁が散る。
部屋を出たときと比べると考えられないような惨めな姿で、レスティアは男達によって王城のある一室に連れ込まれた。
昼間にも関わらず薄暗く感じる、静かな部屋。
カーテンをきっちりと閉めているからだろう。
その部屋の中央にはひとりの男がいた。
レスティアを連れ去った男達と似たような服装をしている若い男だ。
(怖い……)
だが男達は剣を抜き、それをこちらに向けた。
「……っ」
白刃の煌き。
その恐ろしさに蒼白になったまま動けないレスティアを一瞥すると、男は泣き叫ぶ侍女達に低い嗄れた声で告げた。
「王女を置いていけ。そうすればお前達は見逃してやる」
レスティアがその言葉の意味を理解するよりも早く、侍女達は悲鳴を上げながら我先にと争って廊下を駆け抜けていく。
誰ひとりとして、今まで仕えていた王女を守ろうとする者はいなかった。
呆然と立ち尽くすレスティアを、男は嘲笑う。
「たいした王女様だ。身を挺して守らなければと思うような忠義者は、ひとりもいないらしい」
(な、何が起こっているの……?)
そんな屈辱的な言葉も、王女の耳には届かなかった。
事態を把握することができないまま、足が震えて立っていられなくなる。倒れるようにその場に座り込んだ王女を、壮年の男に付き従っていた若者達が左右から拘束して、引き摺るようにして無理矢理立たせた。
「はっ、離して……」
肌に触れる他人の温もりに、背筋がぞわりとする。
振り解こうとして弱々しく抵抗するが、儚い王女はあまりにも無力だった。男達は、薄紅色のドレスから伸びるレスティアの細い腕をきつく掴んで連れ去っていく。
(ひどい。どうしてこんな目に……)
今まで、こんな乱暴な扱いをされたことなど一度もない。
忌まわしい手から何とか逃れようとしているうちに、靴が片方脱げてしまった。
綺麗に整えられていた金色の美しい髪が乱れ、飾っていた生花から花弁が散る。
部屋を出たときと比べると考えられないような惨めな姿で、レスティアは男達によって王城のある一室に連れ込まれた。
昼間にも関わらず薄暗く感じる、静かな部屋。
カーテンをきっちりと閉めているからだろう。
その部屋の中央にはひとりの男がいた。
レスティアを連れ去った男達と似たような服装をしている若い男だ。
(怖い……)