亡国の王女と覇王の寵愛

再会

　それから、数日が経過した。
　彼の求婚を承諾したが、特に変わらぬ日々が続いている。
　レスティアは毎日のように図書室に通い、祖国の歴史を学んでいた。
（それにしても他の国の歴史をこんなに深く記すことができるなんて。グスリール王国内には、昔からたくさんの密偵がいたようね）
　国を治める者は、周辺の国の状況もよく探らねばならないのだろう。きっとこの国では別の国の歴史書も、グスリール王国のものと同様に詳しく記してあるに違いない。
（私は王太女としてふさわしい人間ではなかった。他国どころか、自分の国のこともよく知らなかったもの……）
　過ぎ去った時間を戻すことは誰にもできないが、もし両親の優しさに甘えず自分の意志でもっと動いていれば、祖国が滅ぶ前に何かできたかもしれない。
　そう思って唇を噛み締めると、図書室の扉が開かれた。
　思わず顔を上げると、そこにはジグリットの姿がある。
　何か用事があるのだろうかと首を傾げると、彼はなぜか不機嫌そうな顔をした。
「少しは身体を休めろと、そう言ったはずだが」
「……本を読んでいるだけです」
「数日前も熱を出しただろう。しばらくは部屋で休め」
「でも」
「本が読みたければ部屋で読め」
　そう言うとジグリットは、強引にレスティアの手を引いて立ち上がらせる。
「待ってください、まだ読みたい本が」
「あとで運ばせる。いいから来い」
　抵抗するレスティアに焦れたのか、ジグリットはレスティアの身体を抱き上げて運んでいく。突然浮き上がった身体に驚いて、レスティアは彼の首にしがみついた。
「どこに行くのですか？」
　そのまま部屋に連れて行かれると思っていたが、ジグリットはレスティアを抱き上げたまま図書室を出ると、さらに王城の奥へ向かう。レスティアの質問にも答えず、やがてある部屋の前で立ち止まると、そこで彼女をようやく下ろしてくれた。
「ここは？」
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