亡国の王女と覇王の寵愛
(やっぱり革命を起こそうとした前年には、小さい反乱が相次いでいる。しかも不作の年だったようね)
資料を見る限り、グスリール王国はレスティアが思っていたものとはまったく違い、裕福ではなかったようだ。
美しく贅沢な造りの王城に、毎日違うものに着替えても余るほどのドレス。山のような装飾品の類を思い出し、レスティアは溜息をついた。
探し求めていた真実。その答えは単純だった。
国民は、このままでは生きてはいけないと思うほどに貧しかったのだ。
だから革命を起こそうとした。生き延びるにはそれしか方法がないと、そこまで追い詰められていた。
革命は失敗に終わり、立ち上がった人達は無残にも虐殺された。
それから百五十年の歳月で、彼らの生活はどう変わっていたのだろう。
(もしその時代よりもさらに、悪化していたら……)
事実を隠し、なかったことにした歴史書を見ても、国民のために何かしたとは考えにくい。ただ押さえ付け、二度と革命など起こさないように脅しただけだ。
それに今年は建国七百年で、大規模な式典がいくつもあった。その式典用に多くのドレスを仕上げたばかりではなかったか。しかも別宮を建設する予定まであったのだ。それにかかる費用はきっと多額だったに違いない。
祖国グスリール王国は滅ぼされたのではなく、自らの重みで傾き、崩壊してしまったのだ。ヴィーロニア王国が侵攻しなくても、いずれ滅びる運命にあったに違いない。
それを知らず、ただ侵略者としてジグリットを憎んだ。
世間知らずの王女と言われても仕方がない。自分の国のことを何ひとつ知らなかったのは事実だったのだから。
(恥ずかしい……)
もしあのままの自分が女王になったとしても、事態は何ひとつ改善しなかっただろう。
レスティアには、生まれたときから何人もの婚約者候補がいた。
もうすぐ正式に婚約者が決まることになっていたが、きっと結婚したとしても政治に興味を持てずにただ美しく着飾るだけで、すべてを夫になった男に任せきりになっていただろう。
そんなレスティアだったから、実際はこうだったのだと教えられても信じなかったと、自分でも思う。もし信じたとしても、それが実際にはどんなことなのか、実感など持てなかっただろう。だからこそジグリットは、自分で調べて真実を知るように仕向けたのだ。
本を閉じ、溜息を付く。
傍に付き従っているメルティーに声をかけた。
資料を見る限り、グスリール王国はレスティアが思っていたものとはまったく違い、裕福ではなかったようだ。
美しく贅沢な造りの王城に、毎日違うものに着替えても余るほどのドレス。山のような装飾品の類を思い出し、レスティアは溜息をついた。
探し求めていた真実。その答えは単純だった。
国民は、このままでは生きてはいけないと思うほどに貧しかったのだ。
だから革命を起こそうとした。生き延びるにはそれしか方法がないと、そこまで追い詰められていた。
革命は失敗に終わり、立ち上がった人達は無残にも虐殺された。
それから百五十年の歳月で、彼らの生活はどう変わっていたのだろう。
(もしその時代よりもさらに、悪化していたら……)
事実を隠し、なかったことにした歴史書を見ても、国民のために何かしたとは考えにくい。ただ押さえ付け、二度と革命など起こさないように脅しただけだ。
それに今年は建国七百年で、大規模な式典がいくつもあった。その式典用に多くのドレスを仕上げたばかりではなかったか。しかも別宮を建設する予定まであったのだ。それにかかる費用はきっと多額だったに違いない。
祖国グスリール王国は滅ぼされたのではなく、自らの重みで傾き、崩壊してしまったのだ。ヴィーロニア王国が侵攻しなくても、いずれ滅びる運命にあったに違いない。
それを知らず、ただ侵略者としてジグリットを憎んだ。
世間知らずの王女と言われても仕方がない。自分の国のことを何ひとつ知らなかったのは事実だったのだから。
(恥ずかしい……)
もしあのままの自分が女王になったとしても、事態は何ひとつ改善しなかっただろう。
レスティアには、生まれたときから何人もの婚約者候補がいた。
もうすぐ正式に婚約者が決まることになっていたが、きっと結婚したとしても政治に興味を持てずにただ美しく着飾るだけで、すべてを夫になった男に任せきりになっていただろう。
そんなレスティアだったから、実際はこうだったのだと教えられても信じなかったと、自分でも思う。もし信じたとしても、それが実際にはどんなことなのか、実感など持てなかっただろう。だからこそジグリットは、自分で調べて真実を知るように仕向けたのだ。
本を閉じ、溜息を付く。
傍に付き従っているメルティーに声をかけた。