亡国の王女と覇王の寵愛
よく見れば、幼い頃から可愛がってくれた年上の従兄のディアロスだった。兄弟のいないレスティアは、昔から彼を本当の兄のように慕っていたのだ。
「兄様……。よかった、生きていて」
涙が滲んで頬を伝う。
もう二度と、会えないと思っていたのに。
すぐにでも抱き合って再会を喜びたかったが、レスティアの腰に腕を回していたジグリットはその手を離そうとせず、ただ低く呟いた。
「そうか。やはりディアロスか」
その声に含まれていた冷たさが、再会を喜んでいたレスティアの心を瞬時に凍り付かせる。
「ジグリット……」
「レスティア?」
ディアロスにとって、ジグリットは侵略者であり敵国の王だ。
そんな男を、グスリール王国のただひとりの王女が懇願するような声で呼んだのだ。かなり驚いたのだろう。
再会を喜んでいたディアロスの表情が険しくなる。その視線は、レスティアの腰に回されているジグリットの腕を睨むようにして見つめていた。
「何度尋ねても名乗ろうとしなかったからな。だが、これではっきりした。連れて行け」
国王の命令に、ここまで先導してくれた騎士がすぐに反応した。左右に配置されていた騎士に囲まれて連れ出されたディアロスは、何度もレスティアの名を呼んでいた。
「……」
レスティアはジグリットに抱かれたまま、その様子を見えなくなるまで見つめていた。
グスリールの歴史しか知らない彼にとって、レスティアは敵国の王に捕えられた王女にしか見えなかっただろう。
ジグリットに向けられていた、射貫くように鋭い視線を思い出して俯く。
きっと連れて行かれた先は、最初にレスティアが居たような監禁部屋に違いない。だとしたら彼は、これからどうなるのだろう。
(ディア兄様……)
昔から聡明な人だった。きっとレスティアのように真実を知れば、きっとグスリール王国を建て直したいと思ってくれると信じている。だがジグリットは、捕えた彼をどうするつもりなのだろう。
レスティアは傍に立つジグリットを見上げた。
彼は表情も変えずに視線を扉に向けている。
その横顔を見つめても、ジグリットの気持ちはわからない。
「兄様……。よかった、生きていて」
涙が滲んで頬を伝う。
もう二度と、会えないと思っていたのに。
すぐにでも抱き合って再会を喜びたかったが、レスティアの腰に腕を回していたジグリットはその手を離そうとせず、ただ低く呟いた。
「そうか。やはりディアロスか」
その声に含まれていた冷たさが、再会を喜んでいたレスティアの心を瞬時に凍り付かせる。
「ジグリット……」
「レスティア?」
ディアロスにとって、ジグリットは侵略者であり敵国の王だ。
そんな男を、グスリール王国のただひとりの王女が懇願するような声で呼んだのだ。かなり驚いたのだろう。
再会を喜んでいたディアロスの表情が険しくなる。その視線は、レスティアの腰に回されているジグリットの腕を睨むようにして見つめていた。
「何度尋ねても名乗ろうとしなかったからな。だが、これではっきりした。連れて行け」
国王の命令に、ここまで先導してくれた騎士がすぐに反応した。左右に配置されていた騎士に囲まれて連れ出されたディアロスは、何度もレスティアの名を呼んでいた。
「……」
レスティアはジグリットに抱かれたまま、その様子を見えなくなるまで見つめていた。
グスリールの歴史しか知らない彼にとって、レスティアは敵国の王に捕えられた王女にしか見えなかっただろう。
ジグリットに向けられていた、射貫くように鋭い視線を思い出して俯く。
きっと連れて行かれた先は、最初にレスティアが居たような監禁部屋に違いない。だとしたら彼は、これからどうなるのだろう。
(ディア兄様……)
昔から聡明な人だった。きっとレスティアのように真実を知れば、きっとグスリール王国を建て直したいと思ってくれると信じている。だがジグリットは、捕えた彼をどうするつもりなのだろう。
レスティアは傍に立つジグリットを見上げた。
彼は表情も変えずに視線を扉に向けている。
その横顔を見つめても、ジグリットの気持ちはわからない。