亡国の王女と覇王の寵愛
「そうだな。しばらくはお前のように、閉鎖された場所で過ごしてもらうことになるだろう。だが、それからどうなるかはあの男次第だ」
「兄様、次第?」
「ああ。これからどうするか、考える時間は充分に与えるつもりだ。だが……」
その厳しい目は、国王として当然のものだろう。でもディアロスならばきっとわかってくれる。そう信じて、レスティアは頷いた。
「あの、私も兄様とお話したいのですが……」
それでも、彼が真実を知るための手助けがしたい。そう思って提案すると、ジグリットはすぐに答えず、考え込むように片手を額に当てる。
「すぐに会うのは危険だ」
「ディア兄様は私を傷付けたりしません!」
ずっと幼い頃から一緒だった兄のような存在だ。彼が自分に敵意を向けるなど、考えたくもない。思わずそう叫んでしまい、はっとして口もとを押さえる。
今の自分はグスリール王国の王女ではない。敵国だったヴィーロニアの王妃になるのだ。それをディアロスが裏切りだと思うかもしれない。
だからジグリットはレスティアの身を心配してくれたのだ。
「……ごめんなさい。私」
「とにかく今は駄目だ。落ち着いてきたら考えよう。今日はもう休むといい」
彼はそれだけ言うと、背を向ける。
レスティアは唇を噛み締めて、その後ろ姿を見送った。
グスリール王国のたったひとりの王女であり、ヴィーロニアの王妃となる身でもある。
今となってはどちらの国も、レスティアにとっては大切になっていた。この国で出逢った人達は誰もが親切で、好意を向けてくれる。
自分でも望んだこととはいえ、その複雑な立場がレスティアを苦しめていた。両手を固く握り締め、心の中を吹き荒れる嵐に耐えるように固く目を閉じる。
ジグリットの手を取ったときから、もうこの国で生きると決めていた。だから彼がどんな選択をしようとも、ついていくしかない。
ジグリットはそのままレスティアの寝室から出ようとしていたが、部屋を出る寸前に立ち止まり、振り向いた。
「どんな様子なのか、毎日報告させよう」
それでも彼女の心の痛みを、ジグリットは無視したりしなかった。気遣ってくれているのを感じ、レスティアはようやく微笑む。
「ありがとう……」
「兄様、次第?」
「ああ。これからどうするか、考える時間は充分に与えるつもりだ。だが……」
その厳しい目は、国王として当然のものだろう。でもディアロスならばきっとわかってくれる。そう信じて、レスティアは頷いた。
「あの、私も兄様とお話したいのですが……」
それでも、彼が真実を知るための手助けがしたい。そう思って提案すると、ジグリットはすぐに答えず、考え込むように片手を額に当てる。
「すぐに会うのは危険だ」
「ディア兄様は私を傷付けたりしません!」
ずっと幼い頃から一緒だった兄のような存在だ。彼が自分に敵意を向けるなど、考えたくもない。思わずそう叫んでしまい、はっとして口もとを押さえる。
今の自分はグスリール王国の王女ではない。敵国だったヴィーロニアの王妃になるのだ。それをディアロスが裏切りだと思うかもしれない。
だからジグリットはレスティアの身を心配してくれたのだ。
「……ごめんなさい。私」
「とにかく今は駄目だ。落ち着いてきたら考えよう。今日はもう休むといい」
彼はそれだけ言うと、背を向ける。
レスティアは唇を噛み締めて、その後ろ姿を見送った。
グスリール王国のたったひとりの王女であり、ヴィーロニアの王妃となる身でもある。
今となってはどちらの国も、レスティアにとっては大切になっていた。この国で出逢った人達は誰もが親切で、好意を向けてくれる。
自分でも望んだこととはいえ、その複雑な立場がレスティアを苦しめていた。両手を固く握り締め、心の中を吹き荒れる嵐に耐えるように固く目を閉じる。
ジグリットの手を取ったときから、もうこの国で生きると決めていた。だから彼がどんな選択をしようとも、ついていくしかない。
ジグリットはそのままレスティアの寝室から出ようとしていたが、部屋を出る寸前に立ち止まり、振り向いた。
「どんな様子なのか、毎日報告させよう」
それでも彼女の心の痛みを、ジグリットは無視したりしなかった。気遣ってくれているのを感じ、レスティアはようやく微笑む。
「ありがとう……」