亡国の王女と覇王の寵愛
第四章
決裂
それから促されるまま、寝台に横たわり眠っていたようだ。
きっと、毎日ディアロスの様子を報告してくれるというジグリットの言葉で安心したのだろう。
目を覚ますと、メルティーが傍にいた。ずっと付き添ってくれていたようだ。
「ご気分は、いかがですか?」
「……ええ、大丈夫です」
優しい声で尋ねられ、そう答える。
起き上がったときに少しふらついたが、心は随分落ち着いていた。それでも随分長く眠っていたらしい。差し込む光がもう緋色に染まっている。
窓の外を見つめたレスティアは、その眩しさにほんの少し目を細め、背中に置いてもらった柔らかいクッションに身を預ける。
沈もうとしている太陽は、空に輝いていたときよりも雄大だ。その燃えるような色にジグリットの姿を思い出して、レスティアは両手を胸に当てる。
幼い頃から本当の妹のように可愛がってくれたディアロス。
最初にジグリットにその可能性を示唆されたときは、彼が自分に危害を加えるなんて考えられないと強く思って反発してしまった。だが侵略者だったはずのジグリットの妻になるのだと聞いたら、ディアロスはどう思うだろう。
優しい従兄は、怒るよりも悲しむかもしれない。
それでもあの国の事情を知ったら、きっとレスティアのように自らの行為を反省し、償う機会を与えてくれたジグリットに感謝するようになる。
そうしたら一緒に、祖国に住んでいた人達のためにできることをしよう。
(私もまだまだ勉強しなくては……)
安静しなければならないと言うメルティーに頼み込み、図書室から本を一冊持ってきて貰った。それを寝台に身体を起こしたまま熱心に読み耽る。
このときのレスティアには、まだわからなかった。
病弱な王女として大切にされていた自分と違って、王族の血を継ぎ、しかも王女の婚約者候補だったディアロスが国内の状況を知らないはずがないと。
とても優しい年上の従兄に、自分も知らなかった裏の顔があるなんて、考えたこともなかった。
きっと、毎日ディアロスの様子を報告してくれるというジグリットの言葉で安心したのだろう。
目を覚ますと、メルティーが傍にいた。ずっと付き添ってくれていたようだ。
「ご気分は、いかがですか?」
「……ええ、大丈夫です」
優しい声で尋ねられ、そう答える。
起き上がったときに少しふらついたが、心は随分落ち着いていた。それでも随分長く眠っていたらしい。差し込む光がもう緋色に染まっている。
窓の外を見つめたレスティアは、その眩しさにほんの少し目を細め、背中に置いてもらった柔らかいクッションに身を預ける。
沈もうとしている太陽は、空に輝いていたときよりも雄大だ。その燃えるような色にジグリットの姿を思い出して、レスティアは両手を胸に当てる。
幼い頃から本当の妹のように可愛がってくれたディアロス。
最初にジグリットにその可能性を示唆されたときは、彼が自分に危害を加えるなんて考えられないと強く思って反発してしまった。だが侵略者だったはずのジグリットの妻になるのだと聞いたら、ディアロスはどう思うだろう。
優しい従兄は、怒るよりも悲しむかもしれない。
それでもあの国の事情を知ったら、きっとレスティアのように自らの行為を反省し、償う機会を与えてくれたジグリットに感謝するようになる。
そうしたら一緒に、祖国に住んでいた人達のためにできることをしよう。
(私もまだまだ勉強しなくては……)
安静しなければならないと言うメルティーに頼み込み、図書室から本を一冊持ってきて貰った。それを寝台に身体を起こしたまま熱心に読み耽る。
このときのレスティアには、まだわからなかった。
病弱な王女として大切にされていた自分と違って、王族の血を継ぎ、しかも王女の婚約者候補だったディアロスが国内の状況を知らないはずがないと。
とても優しい年上の従兄に、自分も知らなかった裏の顔があるなんて、考えたこともなかった。