亡国の王女と覇王の寵愛
彼は毎日ほとんど食事を口にせず、誰とも会話もせずにただ静かに考え込んでいるらしい。随分痩せてしまったと、イラティは本当に心配そうだった。
そう聞いても、レスティアにできることは何もない。自分がそうだったように、他人に教えられて気付いても意味がないのだから。
今は耐えるしかなかった。
きっといつか、ディアロスも気が付く時が来る。
そう信じて、彼のために祈っていた。
そんな日々を過ごしていた、ある静かな夜。
明るい月を見つめながら、レスティアは部屋を訪ねてきたジグリットと向かい合っていた。
色々と忙しいようで、彼が訪ねてくるのはいつも夜だ。それでも毎日レスティアのもとを訪れ、体調を気遣ってくれる。正式な結婚はまだだが、周囲はもうレスティアを王妃として扱ってくれるし、ジグリットもとても大切にしてくれていた。あまり気遣われては、また甘やかされ、溺愛されていた昔のように戻ってしまうのではと危惧してしまうくらいだ。
部屋を去る前、ジグリットは十日ほど留守にすると彼女に告げた。
「遠征、ですか?」
「ああ。そう大きなものではないが、リステ王国の奥地で反乱を起こした者がいた。今までおとなしく従っていた者ばかりだから、少し不可解だ。俺が直接行ってこようと思う」
(リステ王国……)
そこはイラティの祖国だったが、今はこのヴィーロニアの支配下にある。
歴史書から学んだことから推測すると、グスリール王国が内部から崩壊しようとしていたように、リステ王国もまた何か問題があったようだ。だからこそジグリットはその国に攻め入ったのだろう。
ジグリットはなぜ、崩壊寸前の国を次々とその手中に収めているのか。
その思惑はまだすべてがわかったわけではないが、彼はけっしてただの侵略者ではないと、レスティアは信じていた。
無理に追求しなくても、すべてがわかる日が来るだろう。
それに親密な夜を何度も過ごすうちに、レスティアにとってジグリットの存在はもう欠かすことができないくらい、大きなものとなっていた。
覇王などと呼ばれていたが、ジグリットは他国に無為に攻め入るようなひとではない。
理由はまだわからないが、彼にはそうするだけの理由と信念があったのだと信じている。
彼のまっすぐな目が見つめる先を、これからも一緒に見つめたい。
そう聞いても、レスティアにできることは何もない。自分がそうだったように、他人に教えられて気付いても意味がないのだから。
今は耐えるしかなかった。
きっといつか、ディアロスも気が付く時が来る。
そう信じて、彼のために祈っていた。
そんな日々を過ごしていた、ある静かな夜。
明るい月を見つめながら、レスティアは部屋を訪ねてきたジグリットと向かい合っていた。
色々と忙しいようで、彼が訪ねてくるのはいつも夜だ。それでも毎日レスティアのもとを訪れ、体調を気遣ってくれる。正式な結婚はまだだが、周囲はもうレスティアを王妃として扱ってくれるし、ジグリットもとても大切にしてくれていた。あまり気遣われては、また甘やかされ、溺愛されていた昔のように戻ってしまうのではと危惧してしまうくらいだ。
部屋を去る前、ジグリットは十日ほど留守にすると彼女に告げた。
「遠征、ですか?」
「ああ。そう大きなものではないが、リステ王国の奥地で反乱を起こした者がいた。今までおとなしく従っていた者ばかりだから、少し不可解だ。俺が直接行ってこようと思う」
(リステ王国……)
そこはイラティの祖国だったが、今はこのヴィーロニアの支配下にある。
歴史書から学んだことから推測すると、グスリール王国が内部から崩壊しようとしていたように、リステ王国もまた何か問題があったようだ。だからこそジグリットはその国に攻め入ったのだろう。
ジグリットはなぜ、崩壊寸前の国を次々とその手中に収めているのか。
その思惑はまだすべてがわかったわけではないが、彼はけっしてただの侵略者ではないと、レスティアは信じていた。
無理に追求しなくても、すべてがわかる日が来るだろう。
それに親密な夜を何度も過ごすうちに、レスティアにとってジグリットの存在はもう欠かすことができないくらい、大きなものとなっていた。
覇王などと呼ばれていたが、ジグリットは他国に無為に攻め入るようなひとではない。
理由はまだわからないが、彼にはそうするだけの理由と信念があったのだと信じている。
彼のまっすぐな目が見つめる先を、これからも一緒に見つめたい。