亡国の王女と覇王の寵愛
だから医師の言葉に従い、無理にでも食事をして安静にしていた。
それから数日が経過した。
ようやく普通に食事もできるようになり、寝台の上で身体を起こしている時間も多くなった。
ジグリットは毎朝様子を見に来てくれるが、いつも忙しそうだ。それはリステ王国で起こった反乱のせいか。それともディアロスが逃亡したせいなのか。
もしディアロスが関係しているのならば、レスティアも無関係ではない。罪悪感を覚えるが、ミレンを呼び出すには彼も忙しい時期の今がいい。
レスティアは常に傍に付き従ってくれているメルティーに、気分転換に図書室に行きたいと告げてみる。
「ずっと部屋に籠もっていると気が滅入りそうなの。少しの時間で構わないから」
このところずっと安静にしていたせいもあり、少しならばと彼女は承諾してくれた。
でも予想していたように、部屋の外にある前王妃のための図書室に行くことは止められてしまい、レスティアのためにジグリットが作ってくれた寝室の隣にある図書室に行くことにした。
たしかに、まだ向こう側に歩いていくのは大変かもしれない。おとなしくそこで本を読んでいたレスティアは、しばらく経ってから別の部屋で待機しているメルティーを呼び出した。
「この本の続きが読みたいの。ミレンに頼んで、向こうから持ってきてくれないかしら」
本の題名を告げると、メルティーはすぐに承知してくれた。背筋を伸ばして歩くその後ろ姿を見送る。扉を閉める音が、静かな部屋の中に響き渡った。
(これで、きっと真実がわかるはず……)
レスティアは何度か深呼吸を繰り返し、心を落ち着けようとする。
目を固く閉じ、両手を胸に当てた。掌に感じる鼓動。自分が思っているよりもずっと、緊張しているようだ。
廊下を歩く音が少しずつ近付いてきた。扉を開き、歩いてくるふたり分の足音。レスティアは机に置いてあった本を開き、熱心に読み耽けているふりをする。
「レスティア様、ミレンです」
扉を叩く音に答えて入室を促すと、本を手にしたミレンがゆっくりとした足取りで図書室に入ってきた。知的な色を宿している青い目が、伺うようにレスティアを見つめていた。
彼女が持ってきてくれたのは、ミレンに勧められて一度読んだはずの本だ。聡明な彼女のことだから、きっとこの本が口実だとわかっているのだろう。
「……聞きたいことがあったの」
それから数日が経過した。
ようやく普通に食事もできるようになり、寝台の上で身体を起こしている時間も多くなった。
ジグリットは毎朝様子を見に来てくれるが、いつも忙しそうだ。それはリステ王国で起こった反乱のせいか。それともディアロスが逃亡したせいなのか。
もしディアロスが関係しているのならば、レスティアも無関係ではない。罪悪感を覚えるが、ミレンを呼び出すには彼も忙しい時期の今がいい。
レスティアは常に傍に付き従ってくれているメルティーに、気分転換に図書室に行きたいと告げてみる。
「ずっと部屋に籠もっていると気が滅入りそうなの。少しの時間で構わないから」
このところずっと安静にしていたせいもあり、少しならばと彼女は承諾してくれた。
でも予想していたように、部屋の外にある前王妃のための図書室に行くことは止められてしまい、レスティアのためにジグリットが作ってくれた寝室の隣にある図書室に行くことにした。
たしかに、まだ向こう側に歩いていくのは大変かもしれない。おとなしくそこで本を読んでいたレスティアは、しばらく経ってから別の部屋で待機しているメルティーを呼び出した。
「この本の続きが読みたいの。ミレンに頼んで、向こうから持ってきてくれないかしら」
本の題名を告げると、メルティーはすぐに承知してくれた。背筋を伸ばして歩くその後ろ姿を見送る。扉を閉める音が、静かな部屋の中に響き渡った。
(これで、きっと真実がわかるはず……)
レスティアは何度か深呼吸を繰り返し、心を落ち着けようとする。
目を固く閉じ、両手を胸に当てた。掌に感じる鼓動。自分が思っているよりもずっと、緊張しているようだ。
廊下を歩く音が少しずつ近付いてきた。扉を開き、歩いてくるふたり分の足音。レスティアは机に置いてあった本を開き、熱心に読み耽けているふりをする。
「レスティア様、ミレンです」
扉を叩く音に答えて入室を促すと、本を手にしたミレンがゆっくりとした足取りで図書室に入ってきた。知的な色を宿している青い目が、伺うようにレスティアを見つめていた。
彼女が持ってきてくれたのは、ミレンに勧められて一度読んだはずの本だ。聡明な彼女のことだから、きっとこの本が口実だとわかっているのだろう。
「……聞きたいことがあったの」