亡国の王女と覇王の寵愛
ディアロスとイラティはまだ、ヴィーロニア王国からの脱出には成功していないようだ。
ふたりはリステ王国だった場所を目指しているようだとジグリットから聞き、レスティアは図書室から持ち出した世界地図を見つめながら首を傾げる。
(ふたりは今、どこにいるのかしら……)
まだ病み上がりのレスティアのために、寝室の暖炉に火が入れられていた。
薪が爆ぜる音が、静かな部屋に響き渡る。
部屋の外はもうかなり気温が下がっているようだ。窓の内側に水滴が貼り付き、ゆっくりと重なり合うようにして落ちていく。
「リステ王国の反乱は、もう大丈夫なのですか?」
「ああ。激しい戦闘を繰り広げていると聞いたから急いで駆けつけたが、行ってみるとほとんど老兵ばかり。それも力尽きたのか、俺が行くとすぐに降伏してきた。だが何度尋ねても兵を挙げた理由を語らないから、厄介だな」
「……」
寛いだ様子で椅子に座っているジグリットは、何かを深く考え込んでいるようだ。それでも問いにはきちんと答えてくれる。
(でも、それではまるでジグリットを呼び寄せるのが目的だったような……)
レスティアは思案する。
老兵ならばリステ王国に対する忠義も厚かっただろう。
これは最初からすべて、仕組まれたことではないか。
そう思ったのは、ディアロスのことを語るときの、あのイラティの表情を知っていたからだろう。
恋だけではまだ足りない。
まるで従属しているかのような、恍惚とした表情。
彼女がリステ王国の老兵達と通じ、ジグリットが不在のうちにディアロスを逃がそうとしていたのではないか。
それをジグリットに伝えると、彼は厳しい顔をして黙り込んでしまう。その視線は、レスティアが広げた地図に向けられていた。
ふたりはリステ王国だった場所を目指しているようだとジグリットから聞き、レスティアは図書室から持ち出した世界地図を見つめながら首を傾げる。
(ふたりは今、どこにいるのかしら……)
まだ病み上がりのレスティアのために、寝室の暖炉に火が入れられていた。
薪が爆ぜる音が、静かな部屋に響き渡る。
部屋の外はもうかなり気温が下がっているようだ。窓の内側に水滴が貼り付き、ゆっくりと重なり合うようにして落ちていく。
「リステ王国の反乱は、もう大丈夫なのですか?」
「ああ。激しい戦闘を繰り広げていると聞いたから急いで駆けつけたが、行ってみるとほとんど老兵ばかり。それも力尽きたのか、俺が行くとすぐに降伏してきた。だが何度尋ねても兵を挙げた理由を語らないから、厄介だな」
「……」
寛いだ様子で椅子に座っているジグリットは、何かを深く考え込んでいるようだ。それでも問いにはきちんと答えてくれる。
(でも、それではまるでジグリットを呼び寄せるのが目的だったような……)
レスティアは思案する。
老兵ならばリステ王国に対する忠義も厚かっただろう。
これは最初からすべて、仕組まれたことではないか。
そう思ったのは、ディアロスのことを語るときの、あのイラティの表情を知っていたからだろう。
恋だけではまだ足りない。
まるで従属しているかのような、恍惚とした表情。
彼女がリステ王国の老兵達と通じ、ジグリットが不在のうちにディアロスを逃がそうとしていたのではないか。
それをジグリットに伝えると、彼は厳しい顔をして黙り込んでしまう。その視線は、レスティアが広げた地図に向けられていた。