亡国の王女と覇王の寵愛
それが愛しているからではないと、レスティアにもはっきりとわかった。そうだとしたら、レスティア本人に何も伝えずに直接国王に懇願するわけがない。
「これはジグリット様から伺ったことですが、それがあまりにも性急で執拗だったことから、国王は不審を抱いてそれを退けたようです。一国の王としては問題が多かったかもしれませんが、愛娘であるレスティア様を想う心は本物だったと私は思います」
(……お父様)
懐かしい父の面影が甦る。多少過保護ではあったが、いつも尽きることのない愛を惜しみなく注いでくれた。
涙が零れ落ちそうになって、慌てて俯く。
「ディアロスの狙いは、国王の座だったようです。グスリール国王は建国七百年の式典で、レスティア様の婚約者を発表するつもりでした。そしてそれは、ディアロスではなかった。事前にそれを知った彼は、過激派の革命軍を煽って兵を挙げさせたのです」
「そんな、ディア兄様が……」
大好きだった、優しい従兄。
そんな彼があの戦乱を引き起こした張本人だったとは。
すぐには信じられなくて、両手を固く握り締めて何度も首を振る。
ジグリットとミレンは、真実は残酷だと何度も繰り返し告げていた。それはこのことを指していたのだろうか。
「ジグリット様は革命が引き起こる前にグスリール王国を制圧しようと、機会を伺ってしました。けれどディアロスに煽られた革命軍は、予想よりも早く決起してしまった。それを聞いてジグリット様はすぐに兵を率いて駆けつけましたが、すでに国王夫妻は殺され、王城は破壊し尽くされていました。何としてもレスティア様だけは助けようと、ジグリット様は自ら先頭に立って王城に乗り込んでいったのです」
あのとき、破壊され尽くした王城で聞いた鬨の声は、革命軍のものだったのかもしれない。
(ああ……)
ジグリットは両親の仇ではなかったのだ。
それどころか、あの凄惨な戦場からレスティアの命を救ってくれた恩人だった。
衝撃的な真実の中で、それだけが最後に残された希望の光。
彼を愛したのは間違いではなかった。きっと亡き両親も、ジグリットの妻となることを祝福してくれるだろう。
ふと、あの国が滅んだ日のことを思い出す。
(彼らの言っていた、あの御方というのはディア兄様のことだったの?)
そう、町の人間を王城に招き入れたのもディアロスだった。あれがすべて、ディアロスと手を組んだ革命軍のものだとしたら、王城の占拠は簡単だっただろう。
「これはジグリット様から伺ったことですが、それがあまりにも性急で執拗だったことから、国王は不審を抱いてそれを退けたようです。一国の王としては問題が多かったかもしれませんが、愛娘であるレスティア様を想う心は本物だったと私は思います」
(……お父様)
懐かしい父の面影が甦る。多少過保護ではあったが、いつも尽きることのない愛を惜しみなく注いでくれた。
涙が零れ落ちそうになって、慌てて俯く。
「ディアロスの狙いは、国王の座だったようです。グスリール国王は建国七百年の式典で、レスティア様の婚約者を発表するつもりでした。そしてそれは、ディアロスではなかった。事前にそれを知った彼は、過激派の革命軍を煽って兵を挙げさせたのです」
「そんな、ディア兄様が……」
大好きだった、優しい従兄。
そんな彼があの戦乱を引き起こした張本人だったとは。
すぐには信じられなくて、両手を固く握り締めて何度も首を振る。
ジグリットとミレンは、真実は残酷だと何度も繰り返し告げていた。それはこのことを指していたのだろうか。
「ジグリット様は革命が引き起こる前にグスリール王国を制圧しようと、機会を伺ってしました。けれどディアロスに煽られた革命軍は、予想よりも早く決起してしまった。それを聞いてジグリット様はすぐに兵を率いて駆けつけましたが、すでに国王夫妻は殺され、王城は破壊し尽くされていました。何としてもレスティア様だけは助けようと、ジグリット様は自ら先頭に立って王城に乗り込んでいったのです」
あのとき、破壊され尽くした王城で聞いた鬨の声は、革命軍のものだったのかもしれない。
(ああ……)
ジグリットは両親の仇ではなかったのだ。
それどころか、あの凄惨な戦場からレスティアの命を救ってくれた恩人だった。
衝撃的な真実の中で、それだけが最後に残された希望の光。
彼を愛したのは間違いではなかった。きっと亡き両親も、ジグリットの妻となることを祝福してくれるだろう。
ふと、あの国が滅んだ日のことを思い出す。
(彼らの言っていた、あの御方というのはディア兄様のことだったの?)
そう、町の人間を王城に招き入れたのもディアロスだった。あれがすべて、ディアロスと手を組んだ革命軍のものだとしたら、王城の占拠は簡単だっただろう。