亡国の王女と覇王の寵愛
「ああ、戻ったか」
「駄目です。護衛もいないのにこんなところで……」
差し伸べられた手を握りながらも、思わず叱るように言ってしまう。
「心配してくれるのか?」
「そんなの、当然です!」
そう言うと同時に繋いだ手を引き寄せられ、腕の中に抱き締められる。ミレンがお辞儀をして、そっと立ち去ったのが見えた。
「……どうかしたのですか?」
どんなに会いたいと言っても会えなかった彼がこうして訪ねてきたのだ。きっと理由があるのだろう。ひさしぶりに会ったジグリットは、手を伸ばしてレスティアの頬を撫でる。
「すべて終わった。もう何も心配することはない」
「え?」
彼の言葉が何を意味しているのかわからず、首を傾げる。ジグリットはそんなレスティアに告げた。
「ディアロスとイラティを、国境付近で捕らえた。さいわい、リステ王国に入り込む前にすべてを終わらせることができた」
「ふたりを……」
驚き、息を飲むレスティアを安心させるように背を撫で、ジグリットは大丈夫だと、繰り返し告げる。
(そんな……)
レスティアの胸に沸き起こった感情は、安堵ではなかった。
ディアロスから言われたまま、あの言葉を伝えてしまってからずっと後悔していた。
ジグリットが立ち去ってから、数日。
何とか役に立ちたいと、彼の手助けをしたいと思い続けていた。もっと知識を身につけようと、必死に勉強をしていた。
それなのに、何もできなかった。気付かないところで、もうすべてが終わっていたのだ。
成長したつもりだった。
結果だけ見てみれば、何も知らずにただ守られ、大切にされていた王女の頃と、何も変わりないのではないか。だからジグリットは、すべてが終わってからこうして報告してくれたのだ。
自分の不甲斐なさに涙が零れ落ちる。
「どうした?」
腕の中に大切に抱いていたレスティアが、突然泣き出したので驚いたのだろう。ジグリットはかなり戸惑った様子で、そっと髪を撫でる。
「駄目です。護衛もいないのにこんなところで……」
差し伸べられた手を握りながらも、思わず叱るように言ってしまう。
「心配してくれるのか?」
「そんなの、当然です!」
そう言うと同時に繋いだ手を引き寄せられ、腕の中に抱き締められる。ミレンがお辞儀をして、そっと立ち去ったのが見えた。
「……どうかしたのですか?」
どんなに会いたいと言っても会えなかった彼がこうして訪ねてきたのだ。きっと理由があるのだろう。ひさしぶりに会ったジグリットは、手を伸ばしてレスティアの頬を撫でる。
「すべて終わった。もう何も心配することはない」
「え?」
彼の言葉が何を意味しているのかわからず、首を傾げる。ジグリットはそんなレスティアに告げた。
「ディアロスとイラティを、国境付近で捕らえた。さいわい、リステ王国に入り込む前にすべてを終わらせることができた」
「ふたりを……」
驚き、息を飲むレスティアを安心させるように背を撫で、ジグリットは大丈夫だと、繰り返し告げる。
(そんな……)
レスティアの胸に沸き起こった感情は、安堵ではなかった。
ディアロスから言われたまま、あの言葉を伝えてしまってからずっと後悔していた。
ジグリットが立ち去ってから、数日。
何とか役に立ちたいと、彼の手助けをしたいと思い続けていた。もっと知識を身につけようと、必死に勉強をしていた。
それなのに、何もできなかった。気付かないところで、もうすべてが終わっていたのだ。
成長したつもりだった。
結果だけ見てみれば、何も知らずにただ守られ、大切にされていた王女の頃と、何も変わりないのではないか。だからジグリットは、すべてが終わってからこうして報告してくれたのだ。
自分の不甲斐なさに涙が零れ落ちる。
「どうした?」
腕の中に大切に抱いていたレスティアが、突然泣き出したので驚いたのだろう。ジグリットはかなり戸惑った様子で、そっと髪を撫でる。