BAD BOYS
2
「お話終わった?」
話が終わると、見計らったようなタイミングで天使ちゃんともう一人黒髪の男が姿を現した。
こいつが東のトップ。
なんか、ボケーッとしてる人だなあ。
「クウさん、どこにいたんですか。」
メガネくんが苦笑しながら問う。
クウさん、そう呼ばれたトップくんはメガネくんの言葉には一瞥しただけで、言葉は返さずに俺を捉えた。
「オマエ、仲間になるか」
「は?」
一瞬、耳を疑った。
いきなりそんな展開あります?
つーか、俺面倒ごと嫌いなんだけど。
なるべく北には関わりたくねェし。
「ん~?トオルくん?理解出来ないんですけど~?」
「トオルくんは遂に頭まで逝かれました~?」
仲間ですら想像出来なかった言葉なのか、若干焦りを見せながら、ゆるゆるくんと金髪くんが言った。
俺も思わず、は?とか言っちゃったよ。
なんなの~?この人。
「オマエ、学校は?」
その全てを無視するこの人は、ある意味強者なのだろう。
うん、リーダーだね。
俺の背後からは、金髪くん達の呆れたようなため息が聞こえた。
こんなリーダー持つと大変だな。
絶対面倒臭いじゃん、俺なら嫌だ。
ま、南よか断然マシだけどな。
「いってないです。」
俺の言葉に、リーダーくんの後ろの天使ちゃんが少し暗い顔をした。
多分、何か理由があって行ってないとか考えてるんだろうな。
あー、金髪くん達が彼女を嫌ってる理由ってこういう所だな。
うん、ゆるゆるくんみたいなデリケートそうな人には特に、嫌われるだろう。
俺の返答に、リーダーくんはピクリとも反応せず俺をジッと見つめてきた。
急になんだよ。
「トオル、頼むから変なこと言うんじゃねえぞ?先に言っとくが俺は嫌だぞ。」
いやまだ、なんにも言ってねえよ。
「俺は反対だよ~?」
いや、まだ何も言ってないって。
「いくらクウさんの言うことでも、聞けませんね。」
何でこいつら何も言ってねえのに分かってんの。
テレパシー?
リーダーくんの顔が少しショボンとして見えるのは俺にだけか。
何も言ってねえのにって、小さく聞こえたのも気のせいか。
うん、幻聴だな。
「オマエさ、ココに住めよ。」
幻聴か。
「では、俺そろそろ帰ってもいいですか?」
今のは幻聴だ。
だって、初対面の人にしかも素性も分からない野郎に'ここに住め'とか言うか?
しかも、俺にだってちゃんと帰る家あるし。
なんか不思議ちゃん通り越して、頭おかしいんじゃねえの?
「住まねェの?」
「逆に、住むと思いますか?」
「ああ」
ああ、末期だこの人。
早く病院行くことを俺はオススメするよ。
何か言ってくれよ、と金髪くんたちを一瞥するが、彼たちも驚きのあまり固まってしまっていた。
その反応が普通だよな。ウン
「帰る場所あるのか。」
「あーまあ。」
'帰る場所'ならある。
家に、帰宅する場所なら。寝る場所なら。
メンドクセーけど、帰るか。
ソファからゆっくりと立ち上がり、全員の顔を見渡す。
やっと、頭が整理できたのか、さっきの言葉はなかったことにしたのか、
フリーズ状態から帰還した一同は、立ち上がった俺を横からじっと見つめている。
金髪くんは眉にシワを寄せて、ゆるゆるくんは口元に笑みを浮かべて、メガネくんは小さくため息をつきながら。
「...」
「じゃあね、一生のバイバ~イ。」
「この場所のこと言ったらどうなるか、分かってますよね。」
いや、ゆるゆるくん、それ俺死ぬみたいじゃん。
メガネくん言わないし、多分アンタら既に場所ばれてると思うけど。
そして、リーダーくんそんな悲しい顔しないで。なんか悪いことした気分になっちゃうからな。
「またね!三宅くん!」
'またね'か、多分もう'また'は一生来ないと思うけど。
俺関わる気ねェし。
「はい、キミ以外はもう二度と会いたくないですけど。」
最後に'学校'での俺の笑みを見せてやろうじゃないか。
天使ちゃんをみて、ふわりと微笑む。
まるで、愛おしい子を見つめるかのような表情で。
目を見開いて、顔を紅くした天使ちゃんに近づき、頭を撫でる。
かわいいなあ。
そのまま耳元に口を寄せて
「ーーーーーー」
「オイ」
ありゃ残念。
リーダーくんが顰めっ面で俺を天使ちゃんから遠ざけた。
随分、嫉妬深いことですこと。
「手当、ありがとうございました。では」
もう一度放心状態の天使ちゃんに微笑んだ後、ヒラヒラと手を振って、玄関を出た。
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