居酒屋探偵
「えっ、あ、何だ?」
やべ、もしかして見すぎた?
セクハラとか言われたらどうしよう……
俺の心配とは裏腹に、彼女は突然笑顔で拍手をしてきた。
……意味が分からん。
「お誕生日、おめでとうございます!!」
……え、なんで……
「先ほど生を置いた際、スーツから火薬とロウソクの香りがしました。見たところ、拳銃を扱う警察の方では無いようですし、もしかしてここへ来る前、誕生日パーティでクラッカーを鳴らされ、ローソクの火を吹き消したのでは?」
「あ、あぁ……職場の同僚のサプライズで。でもなんで分かったんだ?しかしたら俺、見た目に合わず、警察かもしれねーぜ?」
ふふん、と冗談半分でスーツの胸ポケットから警察手帳を出す真似をしてみる。あるのは煙草の入った箱だけだけどな。
「それはあり得ません。なぜなら……」
彼女の細い指が、俺の白いシャツを撫でた。
「こんな所にケーキのクリームを付けてるような方が、警察なわけありませんから!」
指先についた生クリームを見ながらにひひっと笑い、俺の反応を待たずに逃げるように厨房に戻った。
げ、俺そんなの付けたままここまで来ちゃったのかよ!?
喉からんぐっと変な音が出る。
なんなんだ、このガキ!
「店長、誰なんですかあの娘」