居酒屋探偵
「あー、頼むわ」
「はいはい~」
新しい灰皿と交換してから、またケースからトントンと煙草を出した。
ポケットの百円ライターで先端に火を付け、飲むように煙を吸い込んだ。
僅かに開けた口から溜息と一緒に紫煙を出す。
「……」
どうにも隣からの視線が頬に刺さる。
「……副流煙とかで体悪くすっぞ」
「いや、ここでバイトしてたら嫌でも慣れちゃいますよ」
それもそうか。
居酒屋ってのは通常、オッサン共が酒と煙草とつまみで客が盛り上がる場所。
苦手だったらこんな所でバイトしねぇよな。
でも……
「なんで俺の隣にいるんだよ」
「貴方以外お客様がいらっしゃらなくて暇だからです」
「……さっきの焼鳥は?」
「まだタレが作り終わってません。どうせなら塩と同時に出したいですからね」
「じゃ、ハイボール一つ頼む」
「まだ生がたくさん残ってるじゃないですか」
「……」