居酒屋探偵

めんどくせぇ……

店内は涼しいのに、疲れによる汗がどっと出る。

なんだ、この前にも後ろにも進まねぇ問答は……

このニコニコした、邪気が無さそうに見えて何か企んでそうな顔を見ると、頭を抱えたくなる。

「俺に何か用?」

用ならさっさと済ませてほしい。

俺は頬杖を付いて吏希琉嬢に話しかけた。

「俺と話してても、父親との会話みたいにつまんねーぞ?」

話題を切り出すとしたら、大体『最近学校どうだ?』『学校で何が流行ってんの?』『好きな人いるのか?』の三つくらいだ。

しかも会話が進まない上に聞かれた方は大抵『別に』と返す。

「いえ、私の質問に答えて頂くだけで良いので」

あぁ、俺に言いたい事があったのね。

さっさと言ってくれりゃいいのに。

「私、お客様の名刺を集めるのが好きでして。もし良かったら、貴方のもぜひ!」

吏希琉嬢は『ちょーだい』とばかりに揃えた手のひらをこっちに向けてきた。

随分変わった趣味だな。

まぁかく言う俺も良い歳こいてアニメ見てたりすんだけど。
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