居酒屋探偵
「それでもすごいんです!私、小さい頃探偵さんに助けていただいた事があって……それからずっと憧れてて!」
吏希琉は子供みたいに目を輝かせてる。
こいつにとってはヒーローみたいなものなのかもしれない。
憧れをもつのは悪い事ではないが、その助けてもらった探偵と俺を一緒くたにされても困りものだ。
俺はそんなに憧れられる人間ではない。
「吏希琉ちゃん、ずっと言ってるのよ。将来の夢は探偵だって。大学行ってるのも探偵としての頭脳を磨くためなんですって。はい、お待ち遠様」
店長がごとんごとんと皿に盛られた焼き鳥の盛り合わせを置いた。
照明が塩ダレとタレに反射して、食欲を増幅させた。
「探偵は資格いらねぇ仕事だから必要なのは事務所借りる金くらいだが……」
「そんな夢のない事言わないでちょうだいよ!若い子の前で!」
「若い子ったって大学生なら20歳ぐれーだろ。酒飲める歳を若いって言ってたらいつまでたっても甘えちまうぞ!」
喧嘩腰になる店長と俺をどうどうと制し、吏希琉はタレのかかった焼鳥串を俺の前にぐいと差し出した。
「人の事で揉めないでくださいよ!ここは居酒屋『ぽっぴん』。辛い事や大変な事を忘れて、ゆっくりのんびりお食事をしてもらうお店でしょ?怒ってたら美味しいものも美味しくなくなります!」