約束の代償

お母さん

いつもように会社で過ごしていると
私宛てに緊急の電話がかかってきた。


電話の相手先は、
私の家の近所の◯◯総合病院からだった。


こんなこと、今までに1度もなかったから
思わず背筋に悪寒が走った。


「成澤和子さんの御家族の
瞳さんでしょうか?」


『はい、和子は私の母親ですが…』


「◯◯スーパーの交差点で
交通事故に遭われまして、今こちらの救急に搬送されておりますので、早急に来ていただけますか?」


血の気が引いたような気がした。
足が震え、自分の耳を疑った。


私は慌てて、会社を後にして
◯◯総合病院へとタクシーで向かった。




幸か不幸か、
お母さんは命は落とさずに済んだが
意識が戻らない状態だった。



「今夜が山場だ」という言葉を
テレビドラマや映画以外で聞いてのは
初めてだったから、
未だに自分に起きたことなのか
理解出来ずにいた。



お母さんのベッドの脇で
ただ、ただ見守ることしか出来なかった。


ICUは静まることもなく、
次から次へと機械音がなる。

その度にビクビクして不安で仕方なかった。


お父さんは、主治医と話をしに
私をお母さんの元へ残し病室を出て行った。



こんな時に、ひとりにしないで。


怖いよ、お母さんはどうなっちゃうの?


お父さんと
お母さんと私。

いつも3人で過ごして来たのに
お母さんの「おかえり」も聞けない…


イヤだ、怖いよ。


誰か助けてよ。




その時、私のジャケットから携帯が落ちた。


トン…。


床に落ちた携帯の画面が光った。




あ…モモちゃん。



待受画面に映るのは
お父さんとお母さんと、
私に抱かれるモモちゃんだった。



モモちゃん。
お願い助けてよ。
お母さんを助けて‼︎



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