歌う少女、笑う少年。
「つー……」
こそこそ、こそこそ。
ふふ、ふ、ふふ、と彼女のことを嗤う声。
なーにうたってんの、うけるー。
いつもうたってんじゃんー、ははは。
彼女の名前を、僕は知らない。
「つ、つつつー、つ……」
じ、っと見つめすぎた。
ん? という顔でじいっと見つめ返された。
あ? なにみてんだよ。
後ろから、声が聞こえる。
なに、すずきくんにきがあんの? やっば。うけるー、すずきくんがあいてするわけないじゃんねえ。
「鈴木くん」
「なに?」
後ろから聞こえる声に少々うんざりしながら、後ろの女子たちは僕のことを憎からず思ってることを僕は同じく少々まんざらでもなく思ってる。
だから。
いつも僕は、後ろの女子たちにちゃんと、笑いかける。
「あのさー、うざくない?」
「え? 何が?」
「成宮さんー」
ひそり、とこえを潜めてまたふふ、と後ろの女子は笑った。
あ、彼女成宮さんっていうのか。
「ん? 何で?」
「わーやっぱイケメンはさー痛い子ちゃんにもイケメーン」
「かーっこいー」
ニコニコニコニコと女子たちは満足したようだ。