歌う少女、笑う少年。

「ふー」

曲が終わってからほうっとため息ついてたけど、そんなレベルじゃねえ。これ普通歌い終わったら息切れるわ。

「次だれー」
「あ、あたし歌うー」

いつも話しかけてくる女子の一人、尾崎みゆ(最近名前覚えましたごめんなさい)がぱっとマイクをとった。
最近はやりのラブソング。うん、そんな感じ。
いやでも、そんなことより今は、成宮さんのほうが気になる。都合よく成宮さんが僕の隣にすとんと腰を下ろす。いや、尾崎みゆの隣が開いただけだけど。

「成宮さんすごかったねえ」
「そ? ありがと」
「めっちゃうまかったよ」
「んーカラオケよく行くからかな?」
「え、誰かと?」
「ひとり」
「ひとり?」
「そ。ひとから」
「ひとから」

いや、「ひと」りで「から」おけ。「ひとから」。
知ってたけど聞きなれない単語。

いや雑談幸せ。

「すーずきくんっ」
「うん?」

尾崎みゆが歌い中に僕に話しかけてきた。
何だ?

「聴いてなかったでしょ。ほら、きみーのーことーがーきーにーなーるんでーすっ」

いや、歌詞。

「ひゅーっ! 尾崎公開告白かよお」
「いや、歌詞」

同じこと思ってたけども。

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