歌う少女、笑う少年。
「ずっと周りの目を気にしてるよね」
「ああ」
そんなことは、知ってる。周りの目を、気にしないとクラスの中で、心地よく生きていけないから。
クラスの中で、心地よく生きていけないのは、酸素のない水の中を泳ぐ魚のように頑張って息をするみたいだから。
苦しいから。
辛いんだ。
「鈴木くんなら自由奔放やっててもモテるんじゃない?」
「えっと、そんなことないよ」
「あるよ。あんなキャーキャー言われてニコニコしててさ、辛くないの?」
……辛い?
苦しい思いするくらいならみんなに合わせる努力の方がずっといい。
「辛く、ない」
そう思ってるのに、何でだろう、即答できなかった。
「ふうん」
よくわかんない、と呟いて、成宮さんは本を選び始めた。
なんとなく僕はついてって、はっ、と思ってたことを言ってみる。