夢から醒めた夢



出たはいいけど、なかなか反応がない。



「もしもし?」



首を傾げながら、もう1度言う。

菜緒も不思議そうに私を見てる。



『……愛梨?』

「え?」



低い声で名前を呼ばれて、思わず聞き返した。



『愛梨だな』



決めつけたように言う。

イヤ、確かに愛梨ですけど。

誰だよ。

言い方と声の低さで男だということは分かる。

でも、私に電話をかけてくる男なんて、父親しかいないと思うけど。

だけど、聞いたことあるような声。

それも、ごく最近。

どこでだろう。

さっき話していた大貴じゃなくて……。



「あっ……え⁉」



思い出したのと同時に、まさかという想いが頭の中を支配した。



『切るなよっ』



どこかで見ているのか。

行動を見透かされたように言われる。

本当に、今まさに切ろうとしていた。




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