夢から醒めた夢



「ダメだよ、愛梨ちゃんっ」

「は?」

「慎吾くんは、ヤるのが趣味なんでしょ?」

「そう聞いたけど」

「だったら、好きになっても虚しいだけだよっ」

「……は?」



菜緒は、何を言っているのだろう。

好きってなんだろう。

私は、誰も好きにならないのに。

そう言おうとした時、スマホが鳴った。



「はい」

『今日、逢えるか?』



毎回のごとく、電話の相手は彼だった。



「菜緒と逢っているので、ダメです」

『菜緒?……ああ、仲良いな』

「まぁ、唯一連絡を取る友達なんで」

『そうか。そういう友達は大事だな』



電話口で笑いながらそう言われて、少しくすぐったく感じる。



『じゃあ、来週は?』

「え?来週?来週は大丈夫だけど」

『じゃあ、それで。また連絡する』




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