夢から醒めた夢



「だいたい、愛梨しか家にあげていないから」



その言葉が、とても不思議だった。

何で、私は家にあげてもらえたのだろうか。

菜緒が言うには、ヤるだけの相手を家にはあげない。

でも、私は最初からココだった。

とはいえ、彼女じゃない。

そんな言葉、一つもない。

結局、モヤモヤが残るだけ。

家は私だけかもしれないけど、彼の身体は色んな人が触れている。

彼の心だって、私のモノじゃない。

そう思ったら、胸が痛む。

私は、ここにいていいのかと悩んでしまう。



「何か、難しいこと考えてる?」

「え?」

「眉間にしわ寄っている」



指でそこに触れたかと思えば、今度は軽くキスをしてきた。



「ちょっと、やめてよっ」



慌てて、額を手でガードする。




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