夢から醒めた夢



「何も考えずに、今はひたすら溺れて」



彼の手にかかれば、誰でも言うことを聞いてしまう。

それだけ、器用にやるんだ。

上手いと思ったテクも、今まで何人にやってきたのか気になってしまう。

考えれば考えるほど嫌になってくるけど、溺れていってしまう。

どこかで歯止めをかけないと、離れられなくなってしまう。

そう分かっているんだけど、止められない。


こんなに誰かにすがってなきゃダメだったっけ?

手放したくない人なんて、今までにいた?


菜緒にどうしてもと頼まれて、何度か合コンに出たこともあった。

でも、誰とも馴れ合わず、ひたすら食べて飲んでいた。

そんな私を、男たちは引いていた。

だから、どれだけ飲んだくれても、持ち帰りされるようなことはなかった。

自分がそうなるように仕向けたから。

誰よりも酒飲みで強いのを見せた。

今回もそうだったはずなのに。

男だって、自分より飲む人を選びにくいと思う。




< 73 / 140 >

この作品をシェア

pagetop