夢から醒めた夢
もうダメかもしれない。
我慢しているものが溢れそうになってしまう。
だけど、溢れたところで、「俺にそんなつもりはない」と言われたら、その場で倒れちゃう。
だから、私から距離を取ろう。
彼は、女の子がいないと生きていけない人だから、代わりを探すだろう。
イヤ、電話の相手と一緒にいることになるのだろう。
そのうち、私の存在なんて忘れてしまう。
それでいいんだ。
付き合うことが出来ないのなら、こんなニセモノいらない。
『え?体調悪い?大丈夫か?』
「寝てれば大丈夫」
『そっか。じゃあまた。暖かくして寝とけよ』
「ありがとう……」
初めて嘘をついた。
身体は全然元気なのに、体調悪いと言った。
最後の最後まで優しい言葉なんて、残酷だね。
それから、電話をもらっても何かと理由をつけて逢わなかった。
確認されることはないと思うけど、菜緒にアリバイをお願いしたりして。
菜緒は、何も聞かずに協力してくれた。
こうして、辛い恋は終わるんだ。
そのうち電話もなくなって、私と彼の間には何もなくなるんだ。
そう思っていた。