夢から醒めた夢
「行きたいところ?」
そんな電話も珍しいな。
どこかへ行くなら、大抵父親と行くはずなのに。
『詳しくは話せないけど。とにかく、迎えに行くわ』
「え?迎えに来るの?実家まで行くけど」
『ううん、いいの』
それから来る時間を言って、電話は切れた。
私は思わず、首を傾げてしまう。
親が迎えに来ることなんて、滅多にない。
親が用事があっても、実家に来てと言われるのに。
「愛梨ちゃん、どうしたの?」
首を傾げる私を見て、菜緒が不思議そうに聞いてくる。
「イヤ……なんだろう」
「誰からだったの?」
「お母さんなんだけど……よく意味が分からない」
「分からないって、そんなに難しいこと言われたの?」
「難しくはない。ただ、行きたいとこあるから迎えに行くって言われただけ」
「ん?意味が分からないことはなくない?」