夢から醒めた夢



普通に聞けばそうかもしれない。

ただ、母親がそんなに曖昧に言うことが珍しい。

そもそも、行き先を言わないってことは今までにない。

私の誕生日でもあるまいし、サプライズは必要ない。

一体、なんだろうか。



「まぁ、難しく考えなくても、その日になれば分かるよ」



確かに、菜緒の言う通りだ。

来週の土曜日になれば分かるんだ。



『聞くの忘れてた』



そう言って、菜緒と別れたあとにまた母親から電話があった。



『アンタ、大貴とはどうなった?』

「大貴?誰だっけ?」



そう返せば、盛大にため息をつかれた。



『私の会社の飲み会にいた若い子。イケメンバカじゃない方』



イケメンバカと言われて、思わずドキッとしてしまった。

名前じゃないのに、反応してしまうなんて。




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