夢から醒めた夢



やっぱり、仮にも上司だからだろうか。

話し方が全然違う。

でも、お母さんはパートなはずだけど……。

それよりも、約束って何?

2人でなんの話しをしているの?



「じゃあ、あとはよろしくね。愛梨」

「え?」

「逃げないでよ」

「は?」



意味不明なことを言って、お母さんは1人で帰ってしまう。

えっ、私はどうしろと?

こんなとこに置いていかれても困るんですけど。


そう思っていると、彼が私に近づいてきた。

条件反射で、私はなぜか後ずさりしてしまう。

こんなとこへ来てまで逢うとは思っていなくて、心の準備は出来ていない。

そもそも、連絡がなくなってもう終わったんだと思った。

2度と逢うことはないと思っていた。

なのに、どうして。



「お願いだから、逃げないで」



後ずさりする私に、懇願するように言う。

それは、今までに聞いたことがないような弱々しい声。




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